
それは昨年末(2024年)早朝、偶然見かけた新聞記事「くしろSea級グルメコンテスト」あなたのレシピで全国制覇!を眠気眼で読んだ時から物語は始まります。
オリジナルメニューを募集とのことでした。詳しく記事を読むと、釧路で水揚げされる魚貝類を使用した料理又はお菓子のレシピを募集とのことで、魚種に指定があり、その中に「サバ」との表記がありました。
そこで閃いたのが、当店メニューの「KINGさばおろしそば」です。実は、お客様に提供できないサバの端くれを集めて、大葉・梅干・ガリで作った「混ぜご飯」をたまに妻と2人で食べていました。サバは端くれでも、笹谷商店(釧路)「釧之助の鯖」ですから味はお墨付き、安価な梅干・ガリ・大葉であっさりした味付けで美味しくいただいていました。また、私は出汁茶漬けで食べるのが大好きでサバの端くれが集まるのが楽しみでした。
「あのサバの混ぜご飯いけるかも?」と思い、更に詳しく要項を読むと今回のグルメコンテストでは、材料費にも上限があり、1人前300円程度で5人前1500円。乳製品も利用することが記載されてました。そして、ここで不安な点が2つありました。米の価格高騰と乳製品をつかうことです。お米に関しては取引先の問屋さんがスーパー等より少々安い価格で仕入させてくれているので提供する量を抑えれば、釧之助ブランドの鯖を使用しても金額の範囲内で収めることができそうでした。次の難題は乳製品です。
「ご飯にいけそうな乳製品はチーズかな?」。チーズは釧路市内のスーパー等で安価に購入できるし、しかも材料費にも影響は少なく済みそうなので頭の中では一択でした。
そして、起床してきた妻に「グルメコンテストに応募するぞ」と言って簡単に私案を説明しました。案の定、妻は「ハイハイ。朝からコイツ何言ってんだ?」っていう反応でした。
でも、私は本気も本気で、1次審査を通る作戦を必死に考えました。
1次審査は「くしろ冬祭り」の来場者がレシピと料理の写真で投票し順位が決定されるとのことでした。しかも上位3位までが2次審査(実技審査)に進めるとのことで「混ぜご飯を美味しく魅せるいい方法はないか?」と悩んでいました。
くしろ冬まつりは年明け2月上旬の土日に開催され、コンテストの応募締め切りは年明け1月中旬です。なんせ初めての経験と空想のライバル(勝手に強敵を想像)とのプレッシャー。「釧路市内の飲食店等が応募したら、鶴居村のそば屋の端くれが3位まで入れるわけがないよなあ」と弱気にもなり諦めムードも漂いはじめます。「1次審査は人気投票だからSNS等でアピールして、親族を総動員して投票をお願いしては?」とも思ったのですが、そこまでして順位が下位だった時の惨めさは想像を絶するだろうと思い「極秘で挑戦しよう」決めました。黙っていれば、1次審査で落選しても恥ずかしくないのが最大の理由でした。でも、2次審査に進みたいのが本音でした。
「1次審査突破をどうするか?」悩んでいた時アイデアをくれたのが、いつも視聴していたラジオ番組FMノースウェーブの「おばんですハンバーガーボーイズ」でした。
私はハンバーガーボーイズのファンでして、番組を通じてポスターを入手し店内で掲示したりしています。とある放送日「セントレア空港。夢中になっちゃうCHUBU」のコーナーで名古屋名物のひつまぶしの話題がありました。そして、「サバの混ぜご飯をひつまぶし風に食べれば、自分が美味しいと思っているお茶漬けもいける!」とまた閃いたのでした。
更に、ひつまぶしの食べ方は、味変用の薬味としてチーズを上手く使えることでした。「これはいける!」と思ったのですが、あくまでも1次審査は写真とレシピの審査で、一次審査突破作戦としては少々的外れでした。
「惜しいなあ。2次審査用のアイデアとしては最高だけど、1次審査用の写真1枚で来場者にインパクトを与える方法はないか?」と考えいると、以前、商工会から紹介された講師の先生のことを思い出しました。その講師の先生はSNS投稿についてアドバイスを伝授してくれて、更に便利なアプリを紹介してくれました。その中の手法の1つが「コラージュ写真」でした。コラージュ写真は複数枚の写真を1枚の写真にコマ割りをしてに載せる手法で、文字テキストも挿入でますし、工夫すればひつまぶしの食べ方を1枚の写真で表現することが可能でした。
早速、サバの混ぜご飯を作成し、写真撮影。1次審査用写真を作成して、応募フォームに入力をしました。でも…。何か足りないのでした。
もの足りないものとはネーミングです。
Sea級グルメグランプリの目的に謳われていた「釧路を代表とするシーフードメニューを開発、ご当地メニューとしての地位の確立、広く市民に親しんでもらうメニュー」ここに私は注目していて「グランプリをもし受賞したとき、自分が考えた料理名が郷土料理になったらこんな名誉はことはないよな」と思っていました。そこで考えたのがローカルなネーミングを名付けることでした。
【しゃもじで最終的に具材を混ぜる=方言「かまかす」】、ひつまぶしの食べ方をする「かまかす⇒かまかし」、釧之助ブランドの釧鯖=名付けて「釧路サバのひつまぶし」の誕生でした。我ながらいい名前だと自画自賛しながら応募フォームに入力を開始しました。
しかし、後に判明するのですが、鯖の入っているパッケージをよく読むと「北海道産の大ぶりな鯖を使用」と記載されていることが判り「あら?そうだったのね…。先走ってしまった。トホホ…。」となりました、判明したのが締め切り後だったため、使用する鯖が釧路で水揚げされた鯖であろうことを切に願った次第であります。
2025年も1月を終え2月、Sea級グルメグランプリに応募してからは頭の中がコンテストのことでいっぱいな日々を過ごしておりました。1次審査通過を願い神棚にお祈りする毎日。「くしろ冬まつり」の開催も終わり更にドキドキ感がこみ上げてくる毎日でした。主催者である「くしろ港クルーズ」さんとはメールにて連絡が送信されてきていたのでメール音が鳴るたびに「結果がきたか?」とドキドキしていました。そんな日々が続き「くしろ冬まつり」が終了して2週間位経って音沙汰がないため「きっとダメだったんだなあ。」とも思い始めていました。少々1次審査突破の自信はあったのですが、2次審査までの期間を考慮すると1次審査で落選したと思っていました。
しかし、神様は私を見放してはいませんでした。
実は私、年明けにスピリチュアルな出来事があったんです。
家庭の事情で神社へ参拝が年始に行くことが出来ず、2月上旬になってから神社に伺いました。そこで、おみくじを鶴居神社と釧路の厳島神社で引いたとき、どちらも大吉で内容が一字一句相違のないおみくじを引いてしまったのです。「こんな事あるの?」何かいいことがあるのかな?なんて思ったりしたのですが、1次審査落選だと勝手に思い込んでいたこともあり複雑な気持ちでした。
そんなこんなでそば屋稼業で忙しい日々を過ごし、コンテストの事など忘れてかけていたある日の朝。前日に受信していた迷惑メールを整理していると、釧路港クルーズさんからメールが届いていました。
内容は1次審査の結果報告が遅れてしまい申し訳ありません。との内容で1次審査の結果が記載されていました。なんとギリギリ3位で1次審査通過でした。
年齢のせいなのか私は朝5時30分には起床するので、1次審査結果を見た時は思わず嬉しくて妻をたたき起こして「大変な事が起きたと」報告しました。妻はロト7が当選したのかと思ったそうです。
後は2次審査(調理と実食)です。
この時点で2次審査まで2週間。
2次審査に挑む上で重要なのは更なる料理のブラッシュアップが必要であると思いました。ここで思いついたのが薬味としてのチーズを鶴居村産にすることです。味は申し分ないですが上級品質なチーズは高価であります。材料費を調整して少量でもいいのでわが村のチーズを加えたいとのおもいでした。鶴居村の弱小そば屋が釧路のコンテストにてグランプリを獲得する。しかも本業のそばとは全く関係ない料理で…。これが現実となります。
2次審査は実技審査ですが、この「かまかし」は米を炊き、鯖の中骨を出来るだけ取り除き、焼いて、梅干・ガリ・大葉等を刻みしゃもじで混ぜ、味変用の薬味を用意する。というあまりテクニックを必要としない料理です。案の定、調理時間1時間も必要とせず完成いたしました。審査員の皆様に実食にて審査を受けながら、「かまかし」の説明と情熱を語り、後は天命を待つのみとなりました。
いよいよ結果発表と表彰式。平静を保っていましたが内心はドキドキ。2次審査の会場入りする前に必勝祈願を神社でしていたので神様にも祈りました。調理部門でグランプリを受賞したことを発表されたときは緊張のあまり、どのような反応をしたらいいか解らず「ありがとうございます。」と声は出さず口をパクパクして四方にお辞儀をしてしまいました。全てが終わり駐車場では渾身の「よし!やったぞ」と空に向って発声しました。
調理部門でグランプリを受賞するにあたり色々な感情の変化やスピリチュアルなことであったり、妻や母の助け、諦めず事を成すこと、チャレンジすることの大切さなどいい経験を致しました。今後、グランプリを受賞したからには「かまかし」を釧路の郷土料理としての確立を目指し。美味しい魚介類が水揚げされる釧路市と美味しいチーズ等がある鶴居村。そして、まだまだ美味しい食材がある釧路地方を盛り上げる役割が微力ながらできればと思っております。
この釧路Sea級グルメコンテストが今後も釧路市や近隣の町村を元気づける大会として発展していことを願っております。